「先生、社内の人財育成をしたいと思っているのですが、反発を受けないようにするにはどうすればいいですか?」
ご相談に来られた I 社長。このご相談内容から、とても大切なメッセージが伝わってくるが、読者の方はお分かりだろうか?
この質問をされたとき、最初にお答えしたのは、
「何故、反発されるのですか?」
であった。
もうお分かりになる通り、I社長は致命的な勘違いをしているのである。
「セツメイカイ」による、社内乖離
この質問から分かることは、「普段からどのようにスタッフと関わっているのか」である。
話をよく聴いてみると、お話される内容は多種多様にあったが、要点は──
・今までトップダウンで指示してきた
・スタッフ一人ひとりとキッチリと向き合っていなかった
の2点に絞られ、今まで現場スタッフと真剣に関わってこなかったことで、これから何か新しいことを始めようとしたときに、「現場スタッフからの協力が得られないことが最近」とのことである。
要は、トップダウンのみの運営管理が続いた現場で、全て現場力に頼り、現場で解決させることで、社長は「経営がうまく行っている」と勘違いをし、それが長きに渡って継続してしまい、「スタッフが今までみたいに言うことを聞かないから、人財育成が必要だ」と言うのである。「ホウレンソウの「報」が抜け落ちている」と言いたいのである。
詰まるところ、以前に「説教、命令、介入」を繰り返し受け、スタッフが二度と相談に来ない、と言ったところだろう。
こんな話を聴くと、久しぶりにワクワクするのである。
灯台下暗しの本当の意味
別の日、一顧客として現場スタッフの対応を見ながら素朴な質問をしてみると、その現場力の凄いことに気づいた。スタッフ同士で問題を洗い出し、改善策を決める。決めた後、手順に落とし、担当者レベルで実行出来るようになるまで落とし込む。
さらに驚いたのは、経験値から日々起こる事の法則性を見つけ、「この場合はこうする」といった、処々の対応ルールまでを自分たちでマニュアル化していたことであった。
「これでは中途半端なことをしようとすると、現場のセットアップを乱すだけで、反発を食らっても仕方がない」
それが結論であった。まさに灯台下暗しである。
このように、現場力がある会社は、現場スタッフで「何とかする力」があり、強い思いもある。その内に秘めた「自信と誇り」は確なものであり、会社を支えている要である。
これでは、いつ社員から
「You’re fired!(社長、お前はクビだ!)」
と逆アプレンティス(※)のようになってもおかしくないだろう。そうはならなくても、優秀な人材はいずれ去っていく。
人生の72%を職場で過ごすことを考えると、スタッフからみれば「この社長に人生かけられるか?」と思うのも不思議はないだろう。
重大な問題は、経営者とスタッフとの乖離であり、いかに「リコネクト」し、「一つの会社」としてCS(カスタマー・サティスファクション)の向上と充実を踏まえて、目指すビジョンへと近づき、顧客の心に響くレベルまで基準を上げられるか。
それを設計し仕組化することこそが、社会から支援され継続できる会社の条件であり、その礎を築くのが「インストラクター制度構築」プログラムである。
「これではダメだ!」と日々奮闘しているスタッフは、経営者が思っているより多いのではないだろうか。
そんな意気なスタッフには、エンカイ(援助、解説)で答えたい。