Vol. 21社員やスタッフの呼び方で分かるその会社の成長率

 

人材と人財、さてどう違うのだろうか。今日はその話をしたい。

 

タイトルの通り、会社の規模が大きくなればなるほど、社員やスタッフは「人財」と扱われ、小規模になるほど「人材」と扱われる。

 

これは一体どういうことなのか?

 

先日この疑問を、経営者仲間2名と議論を交わしたのであった。

 

小規模会社の社長は「人材」を好み「人財」を嫌う

事業規模が小規模だけに、人材が投入される持ち場はそのほとんどが雑用と化している所が多い。今まで社長や数名で始めた事業を拡大し始めたときに、手が回らず人を増やしていく過程で、“自分以外でも出来る仕事をする要員”として社員やスタッフ(パート、アルバイト、派遣等)を雇い入れる。

 

その殆どは固定資産としての算出ではなく、あくまでも時間給。経費を抑えながらしかし雑務をお願いするのである。

 

生産工場であれば、“現場作業“が伴う商品の生産工程に”人手“を介入させ、スタッフを雇い、その生産過程が複雑化かつ職人技に近いものは社員として雇うことで、技術やノウハウの流出を抑えかつ熟練となるには年月がかかるため、雇用にした方が経営者にとって都合が良いのも一理ある。

 

これらの傾向を見ても、そこにはコア・ビジネスとして回っているものは1つないし2つ程、または複数の小規模で規模を拡げられないものであるから、ある一連の工程をやれればそれで現場は捌けるので、人財でなくても良いのであり、また昇格や成長の教育や訓練など社員やスタッフが今以上に成長する仕組みや制度がないのも特徴である。

 

 

会社規模が大きくなるほど「人財」としての扱いが増える

大規模事業にはコア・ビジネスとして回しているボリュームが大きくなる。そのため社長が全てを把握することが難しくなり分業化が進むことで、社内には○○部署や○○課が存在する。

 

全体を把握するために社長はそれぞれの部署や課で部長や課長という責任者をおき、責任者とのコミュニケーションで全体を把握することになる。この時点で殆どの会社機能を社員やスタッフに任せている状態となる。それぞれに課す責任も当然増え、ビジネスに於ける精度やケアーも当然高度なものになっていく。

 

この状態では、アルバイトやパートでの雇用よりも社員としての雇用をしたいのが経営者の視点である。その裏側にはノウハウや重要事項の流出、機密情報の保持を重要視するとともに社員の能力を最大限に発揮し日々日常の問題と改善を繰り返す仕組を各部署や部門単位で行っていく「人財」が必要である。

 

よって、社員の成長が会社の成長になることを理解し、人財育成や社員教育、多数の訓練などと同時に成長度に合わせた評価制度や昇進などがあり、自己のレベルを上げると共に会社のレベルを上げていく仕組みがある。

 

小さい会社に限って使う言葉

常に「モチベーションは上げるな!基準を上げろ!」とコラムでもコンサルティングでも言い続けているのであるが、クライアントの方々からモチベーションの話をされるときに必ずお聞きするのが

 

「モチベーションとは何でしょうか?」 

 

この質問をすると殆どの方が「考えたことなかった。明確に説明できない」と言われ、モチベーションと言う言葉を普段から使っている経営者は、自らが理解できていないことを社員に指示していることになる。

 

モチベーションは、とても使いやすい言葉でもあるが、どちらかと言うと精神論に近い言葉でもあり、「目的意識」とでも訳すのであろうか、言葉自体が日本的に訳されて使われているのが現状であり、その日本的な捉え方から見ると内外部の心理的要素が感情の起伏を左右する中、個々のモチベーションを期待しても会社として、社会に貢献する事業として成り立たつはずはなく、会社としての基準を上げるしかないのである。

 

知る限り規模の大きい会社で、この言葉を聞いたことがない。実際にしっかりした「目的」のために会社全体が動いているのであり、この言葉が多く使われる場合は、その「目的」がしっかり共有されていない証拠でもある。

 

モチベーション、語源の英語では全く違うように説明されているので、興味ある方は英英辞書でその意味を調べてみてもらいたい。

 

 

人材と人財、望むのはどちら?

職業柄経営者の方々とお話をする機会が多いが、多くのクライアントの方々の話を聴いていると「人財」や「逸材」を求めているのが分かる。しかし、「人財」という言葉を嫌うきらいがあるのが不思議である。

 

小規模事業の場合、目先の作業をこなすことが全てとなり、それが出来るのであればパートやアルバイトなど「誰でもよい」という範囲が大きくなる。まさに「人材」である。

 

事業規模が大きくなるとどうだろうか。一番の違いは、全てに於いて仕事のボリュームが大きくなってくる。そのため、目先の作業をこなすと同時に人も増え、営業、受発注、書類、電話、社内書類、現場、処々の出費など管理することも増えてくる。その中でも、気を遣うのが、「情報の保有と管理」である。特に技術系や製造系であれば、技術情報や図面など機密保持の対象となるため流出を防ぐ必要もあり、PCの管理や履歴の詳細などをとり、随時監視する体制が必要になる。

 

そうなると、信頼性を取るようになるため社員化が進み、優秀で信頼できる人財を探すようになる。業務に携わってきたパートやアルバイト、派遣社員などを社員起用するのもそのためであり、そこには「人間性」が問われてくるのである。

 

結局は事業や会社を成長させたいのか、させたくないのか

100億円から1000億円規模の事業であれば、創業当初目標にしていた年商2億、5億、10億をクリアーしているところがあるが、実際にその規模をどこまで拡大していくかの目標を再設定しなければならないのは言うまでもない。それだけ社会や顧客に対しての価値の創造が出来なければその目標を設定することも出来ない。

 

目標は通過点と考え、その先にある(事業の)目的がはっきりしていなければ、目標は到底達成されず絵に描いた餅と化する。なぜなら、全社をひとつの目的に向かわせるための行動指針が出来ず、その指針を時には自戒や反省、気づきとして設け、路線から外れた場合に引き戻す必要があるからである。

 

規模の拡大を目指すのであれば、それらをベースに社員力を向上し基準を上げていかなければならない。社員力を上げるには、人間力を上げる育成と教育や訓練を満遍なく定期的に行う必要があるが、それは例えていうならば日々変わる状況や情報のアップデートを盛り込んだ内容でなければ意味をなさない。しかし、基礎や法則性、原理原則は変わることがないため、そこに肉付けしていくのがベストなのであるが、教える側も日々勉強し進歩する必要がある。

 

これが出来たときに初めて、業績の向上が出来るようになり、日々改善することで全ての精度は上がると共に、独自路線を進み、価値がさらに上がるのである。その時に会社は組織化し、各部署や部門での仕組が自ずと回るようになっている。日々の業務は作業も含め更なる精度を上げる取り組みや効率化が進み、改善していくことが日常になる。

 

その解決案として、出てくるのが人財育成であり、現状のブレインとなる社員の育成から将来の主力社員、ブレインとなる社員育成を自社で行う必要があり、社員育成が出来ない会社は必ずと言っていいほど衰退していく

 

その理由として、誰しもが自己実現や自己成長を望むのであり、その成長曲線の延長線上の「なりたい姿」が描けなくなった時点で会社への限界を感じ、成長できるところを探すようになるのである。その代表的なものは「会社で使えるライセンスや資格は何か?」と探しはじめ、この時点ではまだ会社の基準を上げ、皆が成長出来るように寄与しようと努力をする傾向がある。大多数は、「事なかれ主義」であり、変化を嫌う。そのしがらみは組織の場合大きく内部改革を伴う場合がある。そこを突破し基準を上げることに成功した場合、会社の全体の基準は確実に上がり始める。しかし、評価される仕組がなければ、自ずと次の活躍の場所を探し始める人財こそが、その会社を牽引する人財であり、必ずと言っていいほど手放してはならないのである。

 

会社の成長には必ず変化がつきものである。その変化を経営者が受け入れることが出来るか。受け入れた場合、その変化を経営者以外「誰が起こせるか」をしっかりと把握し、その変化に臨機応変に対応できる社員力を育成・教育・訓練の仕組に変える会社を次のレベルに上げられる独自の人財育成の仕組が「社内インストラクター制度」で、確実に会社の発展に寄与する仕組みである。ネクスト・レベル、次世代に対応させるにはアイデアや商品、コンセプトが良くても、社員の力とそれを育む独自の社員育成の仕組がないと無理なのである。